RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
菓子屋 PresentNEW
東京都大田区 2025 /Feb/ 19 updatedモールディングが美しい一枚のアンティークドア。そのドアと同じような装飾を持つ別のアンティークドアを壁材としてリメイして、ひとつながりのデザインだったかのようなファサードが完成しました。壁材の一部がくり抜かれたガラス窓から見える冷蔵ケースには、おいしそうなお菓子が並んでいます。ガラスの折戸のテイクアウトの窓口では、週末になると店主でパティシエの花本采伽(あやか)さんと、コーヒーロースターのご主人・智之さんが笑顔で迎えてくれます。
2年前に移り住んだ西馬込が気に入って、この町で念願のお菓子屋さんを始めることになったという花本さん、アンティークドアがひときわ目を引くファサードは、風情のある西馬込の商店街の街並みにいいアクセントを加えました。2024年10月にオープンした『菓子屋 Present』は、早くも地域の住人に愛されるお店になってます。
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店主の花本采伽さんとご主人の智之さん
大学に入るころから花本さんが興味を持ち始めたのが“米粉の魅力”。小麦粉より日本人の体質に合うことが多く、学生生活の傍ら探求を始め、卒業論文のテーマも米粉にしたという。その後、小麦粉のお菓子の開発に関わる傍ら米粉のお菓子づくりを探求し続け、自身のオンライン・ストアで販売するようになりました。ところが“お客さまの顔を見てお菓子を販売したい”という気持ちがふつふつと浮かび上がって来るようになったのでした。
「2年前、菓子工房と自宅を兼ねられる一軒家を見つけて、西馬込に引っ越しました。その工房でわたしはお菓子の製作、夫は趣味のコーヒー焙煎を始め、オンラインで販売していました。オンラインショップはとても順調だったのですが、職場と自宅を分けたい思いや対面販売への気持ちが強くなっていたところで、通りすがりにこの物件を見つけました」と花本さん。西馬込の商店街に面した店舗物件はすでにスケルトンで条件がとても良く、描いていた店舗がしっくりとくる気がして、そこでお店を始めることをすぐに決心しました。
「店舗設計はDEN PLUS EGGさん一択でした」と笑う花本さん。お菓子づくりを始めたころから、自分のお店を持つことを視野に入れていたので、気になるお菓子屋さんには足を運んでいました。数あるパティスリーの中で、ひときわ惹かれた店舗デザインが三軒茶屋の『リビエール 東京店』。店舗だけでなくお菓子も大好きで、武庫之荘の本店も見に出かけたと言います。「どちらもアンティーク使いが素晴らしくて、本当に好きな空間です。リビエールさんの設計がDEN PLUS EGGさんだったことから、お店を持つときはDEN PLUS EGGに依頼しようと心に決めていたんです」ということで、物件が決まってすぐDEN PLUS EGGに問い合わせをしました。
「初めて千駄ヶ谷のDEN PLUS EGGショールーム行くと、ドアノブや床や家具など、ちょっとしたことまで本当に何もかもがステキで、すべてを委ねようと思いました」と初めてのドキドキ感を教えてくれました。「担当は吉田さんで、センスが素晴らしくて、ぼんやりと伝えただけなのに思い通りのプランが出てきて、『そう! こんな感じにしたかった』と、後から思うようなことばかりでした」。“アンティークを使うこと”がデザインにおいて譲れないポイントであったため、当初花本さんたちが考えていた予算を上回るプランとなったのですが、夢を叶えたい気持ちを優先して予算問題をクリアして理想の店舗をつくることになりました。
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采伽さんお気に入りの真鍮ライトと看板
できあがったお店は、ロンドンかパリの街角からさりげなく抜け出してきたような佇まい。いわゆるお菓子屋さんというイメージではなく、ヨーロッパのコーヒースタンドのようなファサードをイメージしていた花本さんは、好きなお店の外観写真を担当の吉田さんに渡していたのですが、写真よりずっとステキなファサードのプランが送られてきて驚きました。「真鍮の看板とライトがとくに気に入っています。お菓子の写真を撮るととてもかわいくて、インスタスポットになっています」と花本さん。「製菓キッチンと販売スペースを仕切る壁に室内窓をつくる提案もいただき、アンティーク・アイアンを使った窓を付けることになりました。すると厨房でお菓子製作をしているときもお店にお客さんが来たのがすぐにわかるし、窓自体がとてもステキなインテリアとなっていて、大満足です」。
人気の米粉100%のカヌレやフィナンシェは、ちょっと深煎りのブレンドコーヒーとよく合います。米粉に惹かれて約10年という花本さんに、なぜ米粉にまつわる店名にしなかったのか尋ねると「米粉のお菓子だから食べたいと言う方はもちろん大歓迎なのですが、普通においしいお菓子を探しているお客さまにもぜひ食べていただきたいんです。米粉だと知らずに食べて、おいしい!と思ってもらえたらこんなにうれしいことはありません」と話してくれた花本さん。オープンして3カ月、西馬込から米粉のお菓子の魅力がゆっくりと全国に広がっていくことを願わずにはいられません。
菓子屋 Present
東京都大田区西馬込2-18-17
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