RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
cohiki
神奈川県鎌倉市 2024 /Mar/ 07 updated窓際でコーヒーを飲んでいると時おり目の前を江ノ電が通りすぎていきます。鎌倉は腰越の電車通りに新しくオープンした雑貨とカフェ『cohiki』。オーナーの池田菜々子さんは、元々は北欧のインテリアショップでバイヤーなどをしていて、いつかは自分でお店を開きたいと思っていました。インテリア雑貨が好きで、いろいろなアイテムを探しているときヴィンテージ家具を扱う『D+E MARKET』を知り、そこからDEN PLUS EGGの店舗設計事例を知り、イギリスを感じさせるテイストに、これまでの北欧とは違う魅力を感じました。
長く鎌倉に住んでいる池田さんは、お店を持つなら鎌倉市、それも腰越あたりがいいと思い物件を探していたところ、貴重な電車通りの物件を知人に紹介されました。早速見に行くと目的の物件の隣もたまたま空いて、そちらがイメージ通りだったのでこの場所に決めました。
『DEN PLUS EGG』から取り寄せた資料には3冊のブックが入っていました。コンセプトブック、ストアデザインブック、そして『注文住宅の基本仕様』。「この注文住宅のブックを見て驚きました。空間デザインが主流の設計施工会社だと思っていたら、住宅の基礎や構造などもしっかりとつくっている、両方を兼ね備える出会ったことのない会社だと知って発注を決めました」。
最初の打ち合わせのために、池田さんは自分の好きなお店の写真をコラージュした資料をつくりました。元々は蕎麦屋だったので厨房はそのままに、外窓に面する蕎麦打ち部屋を窓向きのカフェ席に変えるプランが生まれました。「打ち合わせの後にイギリスに買い付けに行った担当の吉田さんは、ロンドンから『イメージに合うお店がありました』とグレージュのファサードの飲食店の写真を送ってくださったんです」。その店の雰囲気がとてもよく、今のお店のファサードのイメージのもとになりました。
「北欧風とか何々風とかではなく、性別も年齢も関係のないニュートラルな感じにしたかったんです」と池田さん。店の中はシンプルにグレージュで塗り、センターに大きなアンティークテーブルを置き、壁面に棚を設え、奥にレジカウンターを置くシンプルなつくりになりました。「吉田さんと馬が合って、壁の色などを決めるもの早かったです。自分では絶対に考えつかないことを提案してくれるので、彼女の提案にはいつもワクワクさせられました」。例えば、お店のセンターに置いた大きなテーブルは学校の美術室で使われていたもので絵の具の跡などもそのまま残っていて、お店のシンボル的な存在です。さらにレジカウンターの後ろに古い木箱を積んでものを置けるようにしたり、スペースを考えて丸いテーブルを提案したりしました。レジカウンターの天板には、チーズを熟成させる際につかわれていた板材を再利用しています。
完成したお店を見て菜々子さんは「イメージしていた以上の仕上がりでした」とうれしそうに話します。カップ&ソーサー、グラスやキッチン小物、ニットキャップやソックス、コーヒーやチャイ、大きなテーブルや棚に並べられた品物には菜々子さんのセレクションのセンスが光ります。
ふらりと訪れて日用雑貨を買ったり、お茶を飲んだり、何気ない日常づかいが心地いいお店の誕生となりました。撮影の日はオープンしてようやく3カ月が過ぎたころですが、すでに界隈の高感度な人たちが集まるステキなお店になっていました。