RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
BLUEM COFFEE COUNTER
東京都世田谷区 2023 /Sep/ 08 updated「フェルメールの絵画にはポイントに青い色がつかわれています。その世界観を空間で表現したいと思っていました」という店主の重田和哉さんの言葉のように、壁やカウンター、テーブルやスツール、コースターまですべてが木製の茶色い店内に、ひと際目を惹く鮮やかなライトブルーのエスプレッソマシンが据えられています。象徴的な「青」のあるカウンターを名前にしたコーヒーショップ『BLUEM COFFEE COUNTER』が世田谷の松陰神社商店街に誕生しました。
そのカウンターの中に立つのは、重田和哉さん、好(このみ)さんのご夫婦。和哉さんは大学でイタリア語を専攻していたことからイタリアの文化やコーヒーに興味を持ち始め、卒業後にコーヒーショップを運営する会社に就職。都内のコーヒーショップでお店の立ち上げや店長を経験した後、この店をスタートすることになりました。
和哉さんは“ひとつのことを探求して道を究めたい”という気持ちが強く、以前から職人に憧れがあり、お店を持つならバリスタがカウンターでコーヒーを淹れるカウンターメインのスタイルにしたいと思っていました。「コーヒーショップをはじめ、寿司屋、割烹、バーなど、職人技を極めたときに行きつくところは、手元を見せるカウンター・スタイルのお店だと思うんです」と気持ちを教えてくれた和哉さん、大きいカウンターをメインにバリスタとしての職人技を見てもらえる店構えについて構想し始めました。
そして独立を漠然と考えていたある日、神楽坂の『AKHA AMA COFFEE』で木製のヴィンテージ木材のカウンターの美しさに目を奪われたという和哉さん、それは彼の中で具体的なカウンター・スタイルのコーヒーショップのイメージが生まれた瞬間です。その後『AKHA AMA COFFEE』の設計施工がDEN PLUS EGGだと知り、和哉さんは好さんとともに千駄ヶ谷オフィスを訪ねました。打ち合わせをしたショールームの造作家具やオリジナルドア&カウンターなどの設えを実際に見て、DEN PLUS EGGに依頼すれば自分の理想のイメージを実現してもらえると確信したと言います。最初の打ち合わせで、「“店舗設計において、ファサードがとても大事”と第一声で言われたので、カウンターとファサード、その2つを軸に置いたイメージをし始めました」。まずは自分のイメージを伝えるために、いくつかの気に入った店舗の写真を用意して打ち合わせをしました。
後日、提案されたプランのパース・イラストを初めて見た和哉さんは、理想とするカウンターとファサードを、ウッドで印象的な仕上げたお店のイラストがすっかり気に入ってしまいました。好さんも「彼が考えている理想に近いお店になるなと思いました」と、初回のプランでほぼ現在の形が決まったそうです。ふたりが特に気に入ったのが、カウンターの奥の壁に埋め込むように据え付けられたアンティークのキャビネット。その佇まいは、シンプルな空間に、イタリアのような、クラシック喫茶のようなエッセンスを加え、ひと際美しく映えています。
木材を多用したいという希望はありながらも、木材の種類には詳しくないという和哉さんは、設計担当Kに木材のチョイスと組み合わせをすべて任せました。ファサードのドアはモールディングを施した無垢のオーク材。背面の壁は、木目が細かくシンプルでクールな印象を持つラワン材。カウンタートップはオーク、前側面は壁と同じラワンをつかい背面の壁と一体感を持たせました。すべてをやや濃い色合いのオーガニックオイル仕上げにして、ナチュラルで上質なつや消しブラウンで統一されました。こうした表情の異なる木材を合わせて使うことによって、シンプルな設計の中で素材の違いがより浮き立って効果的に見えます。カウンターのスツールもスタッフが店の雰囲気に合わせて色目を調整してくれるなど、細部にわたり細やかな配慮が行き届いていました。
カウンターの寸法は、知人のバーテンダーからアドバイスをもらったサイズを基本に、エスプレッソをつくるときにタンピングがしやすいよう少し低くし、カフェ仕様に落とし込んで決めました。これまでの和哉さんのコーヒーショップの経験とDEN PLUS EGGの店づくりの実績がうまく重なり、使いやすく美しいカウンターが生まれました。
そのカウンターに沿うように、背壁面の上部に設えられた長い棚は、キャビネットと同じく取り付け金具が見えないように壁に埋め込むように施工されています。この細部への気配りが仕上がりの雰囲気に大きく影響するのです。そして無垢のオーク材の切れ端は、和哉さんがデザインイメージを伝え、オリジナル木製のコースターとなりました。
メニューはエスプレッソをベースに、ESPRESSO OLD BLACK(エスプレッソ)やBLUME LATTE(ラテ)、アイスクリームにエスプレッソをかけるアフォガート、そしてコーヒーを使ったカクテルなど。これまで長きに渡ってバリスタとしてコーヒーを淹れてきた和哉さんは、開店初日から慣れた手つきで次々とエスプレッソを抽出していきます。ヴィンテージ感のあるスピーカーから聞こえてくるのはスウィートなソウル・ミュージック。
通りを行きかう人々が、時折何のお店だろうと覗いていく……。印象的な木製ファサードが、街に新鮮な風を吹かせてくれました。
BLUEM COFFEE COUNTER
東京都世田谷区世田谷4-2-12 瑞雲1F