RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
コンカ
東京都渋谷区 2022 /Oct/ 14 updated軒先の花壇に植えられているハーブを横目に古い木のドアを開けると、そこはまるでパリ・マレ地区にある隠れ家ビストロのような雰囲気。いろいろな形の古いテーブルに着いた大人たちが、ナチュラルワインを片手に穏やかにおしゃべりに講じています。キッチンを忙しく動き回る若きシェフは手際よく料理を仕上げ、ワインボトルを片手にしたマダムはお客さんの間をひらりひらりと回って次々とグラスにワインを注ぎ、映画のワンシーンのような時間が流れています。
「7年かけて“路地裏にある隠れ家的なお店”にようやくたどり着きました」と話すのは千駄ケ谷の『コンカ』のオーナー、オサキカオルさん。姉妹店として近くには『サルーズキッチンマーケット』、『ティグテリア』があります。『コンカ』は、2015年のオープンから2回の移転を経て、いまの路地裏の場所にこぢんまりした理想のお店ができあがりました。
新しいお店は、前店で使っていた壁や扉などをできるかぎり再使用することを考えて設計されています。なぜなら使われていた建材や家具などはすべてカオルさんが気に入ったテイストのものばかりで、何よりも長く使えるいい建材が多く使われていたから。店のファサードは白い壁に印象的なアンティークのドアと窓だけというシンプルなデザインにし、窓の下には古い窯で使われていたレンガを組んだ小さな花壇が。そこには、お店の常連でもあるデザイナー&ガーデナーさんが、ハーブや野花を植えてくれます。
お店に入ると目に入るのは、古材とセメントタイルをモザイク状に組み合わせたユニークなデザインの床。この床の板材も前の店でカウンター横の壁に使っていたものを再利用されています。今回は、これまでと違っていろいろなタイプのテーブルが並んでいます。これまでコンカで使っていたテーブルやアンティークのビストロテーブルなど、イスもばらばらデザインのアンティークを加えて、不ぞろいが楽しいセットになりました。目を引くのはガラス張りのチケット窓口のような大きなカウンター。DEN PLUS EGG の倉庫まで出かけてこのカウンターを見つけたオサキさん、一目惚れだったと言います。
いくつかお店を運営した経験を活かし、いろいろなところに新しいアイデアが取り入れられました。その一つが荷物を入れるカゴの代わりの壁付けの網棚。カオルさんのリクエストを受け、新幹線の荷物棚をイメージして、木と真鍮を組み合わせてDEN PLUS EGGオリジナル家具として製作。スライドできるフックにコートをかけたり、棚の上に荷物を置いたり、とても使い勝手がいいそうです。
こぢんまりとした空間で、天井も高すぎずとても落ち着きます。そしてお店の看板はつくりませんでした。いつも来てくださるお客さまにゆっくり楽しんでもらうには、その方がいいとわかったからだとカオルさんは言います。7年の時を経て、常連さんに普段使いしてもらう理想的な大人のビストロになりました。