RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
Deux Pantes
東京都東村山市 2022 /Apr/ 23 updated「北欧デザインが好きな時期もあったんですが、わたしたちふたりとも年齢を重ねて好きなトーンが変わってきたんです。アンティークがあって、地味な色合いで、ずっといられる落ち着いた雰囲気が好きになってきました」と話すのは、東京郊外、久米川に誕生したカフェ&ビストロ『Deux Pentes(ドゥ・パント)』の白坂夫妻。
木製ファサードがステキな外観、入り口扉の横には大きなガラスの壁があり、脚まで見えるステキなアンティークのショーケースに焼き菓子が並んでいます。ショーケースの見えるガラスの上部には引き戸がついていて、お菓子やドリンクをテイクアウトできます。
大きな英国アンティークの入り口扉を開けて中に入ると、どこか外国旅行に来たのかと思えるような空間が。落ち着いたブルーグリーンの壁、天井の高い客席、不揃いのアンティークのテーブル&チェア、フランス製の陶器の照明などがバランスよくコーディネートされ、大きな窓には柔らかいリネンのシェードカーテン、その隣の壁面には、アンティークの銅の窓枠を不規則的にはめ込んで遊び心をプラス。小学校の校庭に面する大きなガラス窓の席は丸テーブルを置いて、通りを行きかう人を眺められる心地いい場所に。
20年ほど前、とあるカフェで働く同僚として出会った白坂夫妻。いつかふたりで自分たちの好きな空間をつくって飲食店をしたいという漠然と描いてきた夢が理想のかたちで実現しました。
「去年ここの2軒隣にあるパン屋さんに買い物に来たとき、空き物件だったこの場所を見つけ、気に入ってすぐに決めました。ふたりでいつかお店をしたいと漠然と考えてはいたものの具体的なことは何も準備していなかったので、この物件との出会いが夢の実現のきっかけです」と白坂さん。早速奥さまは内装業者を探し始めました。インスタグラムでお気に入りの店舗デザイン会社を見つけて、ご主人に相談するとなんと「ここはいまぼくが働いているお店の店舗設計をしたDEN PLUS EGGで、お店の上に東京オフィスもあるよ」との答え。その偶然に驚いたふたりは、迷わずDEN PLUS EGGへの相談を決めました。「何事もタイミングなんだと思います」とふたりは笑う。
スクラップしたたくさんの理想のお店の写真を携えて、ふたりはDEN PLUS EGG現・東京オフィスを訪問、初めての打ち合わせで気に入った大きなアンティークソファベッドやマーメイドアルチザンタイル、アンティークのアイアン窓枠もプランに組み込んでもらうことを決めました。設計担当者が提案したのはフランス映画に登場しそうな色使いとデザイン性の高い空間。奥さまが好きなハニカムタイルとヘリンボーン・フローリングを組み合わせ、ご主人の希望のフラットカウンターとバランスよく配置、フランスの陶器の照明でアクセントをつけた、かわいいのにクールで落ち着きのある居心地のいいお店。アイアン窓枠をたくさん使って、うち2つをキッチン側にある食器棚の扉としてオリジナル造作しました。
「担当のKさんがすごくて、提案していただくものが好きなものばかりなんです。脚がかわいいアンティークのショーケースを見つけたとき、『脚まで全部見せましょう』と、ショーケースサイズのガラス張りを入れ込んだファサードを提案していただいたり、傘立てが欲しいと相談をしたらアンティークの真鍮の牛乳缶を提案してくれたり、アイデアが素晴らしい上に“センスが伝わる”という感じです」と奥さま。家具はばらばらのデザインのアンティークで壁のコンクリートはむき出しのまま塗装、ところどころがギザギザと出っ張っています。「こういうざっくりしたところが好きなんです! 新しい靴は恥ずかしいから踏んでくれというタイプなので」と笑う奥さま。本当は床に古材を使いたかったけれど、予算の関係で新しい無垢材のヘリンボーン貼りにしました。「でも自分たちでアンティークにするのもそれはそれでいいと思っています。早く汚して味を出したいです」とにっこり。
同じセンスを共有する白坂夫妻と“センスが伝わる”担当者が3人4脚でつくり上げた空間は、この春からいよいよ本格的なスタートを切りました。