RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
Aigrette
兵庫県姫路市 2021 /Apr/ 15 updated好きなものばかり! 初回打ち合わせで心に決めたこと。
姫路城の旧城内に位置するフレンチビストロ、店名は姫路城の別名白鷺城から名前をとってフランス語で白鷺の意の『Aigrette(エグレット)』。2020年1月にオープンしました。木のアーチと両開きの木製ドアを開けると木製テーブルといろいろなかたちのアンティーク椅子、足元は美しいヘリンボーンの木製フローリング。カウンター越しには白いアルチザンタイル、そして奥のスペースには大きい丸テーブル、陶器のランプシェードやアンティークのガラスランプシェードの照明の光が柔らかい陰影を壁に映しています。
オーナーシェフ浅見義人さんは、大阪のフランス料理店『トゥールモンド』『アドック』で約7年の経験を持つ料理人、佐弥さんは『ヌーパピヨン』での経験を持つソムリエール。満を持して郷里の姫路にビストロを開店しました。
2018年に神戸での独立・出店を考え、DEN PLUS EGGに物件探しの相談を始めました。「共通の友人がインスタグラムでフォローしていることで、DEN PLUS EGGさんで好みの内装の写真を見つけてコンタクトをとったんです」と話す浅見さんは、元々はアメリカンヴィンテージが大好き。ヴィンテージアイテムを取り入れたお店を持ちたいと考えていました。
神戸での物件はなかなか見つからず、仕事の変化も重なり独立の計画は一時中断。そんなある日、心の師であるフェルナン・ポワンの言葉「若者よ故郷へ帰れ。その町の市場へ行き、その町の人のために料理を作りなさい」をふと思い出し、姫路で物件探しを始め、姫路城の堀の中に位置する1軒の物件と出会いました。
そこで改めてDEN PLUS EGGにコンタクトを取り、店舗デザインを依頼。「初めて訪問したときにDEN PLUS EGGさんに店舗設計をお願いすることは決めていました」と笑う浅見さん。その理由は打ち合わせに行った苦楽園のオフィスと関連ショップの佇まいに圧倒されたからと話します。その当時、苦楽園にはDEN PLUS EGGヘッドオフィスをはじめ『FLUFFY AND TENDERLY』『WATSON』『D+E MARKET』『DQNQUINA TO-GO』などいくつものショップや事務所が点在していて、そのどれもがふたりを魅了しました。「元々古いものが好きだったんですが、DEN PLUS EGG各ショップにあるものや内装は、どれもすべてが自分たちの好みでした。いや自分たちが知っている好みのものの上をいっている感じでした」と当時の心境を振り返る浅見さん。
全面的に相手を信頼しておまかせする。
「予算との兼ね合いもありますが、絶対に譲れなかったのがアーチ状のエントランスとヘリンボーンの床です」という浅見さん。何事にもこだわりが強いタイプだと自認する彼は、ややもするとすべて自分でデザインしてしまいそうになるところをぐっとこらえて、譲れない希望とイメージと予算を伝えてすべてを担当スタッフK氏にまかせました。そうして出されたプランはすべてに納得がいくもので、限りある予算をかけるところにはしっかりとかけ、不必要な工事をしない、けれど念願のエントランスのアーチも実現しました。「おまかせして本当に良かったと思っています」と話す。
元々テイクアウトとイートインの両方を兼ねる飲食店であった物件のキッチンやトイレの位置、テイクアウトのサービス窓をそのまま生かし、倉庫として使われていた奥のスペースは丸テーブルを置いた半個室のような落ち着きのある客席にしました。ダリのスピーカーからは、静かなジャズやピアノ曲が流れています。「前店のシェフからアドバイスをいただき、丸テーブルを一つ置きました。そこは特別な席になったと思います」の言葉通り、奥の丸テーブル席に座ると時間の流れが緩やかに感じます。その席とキッチンを挟む壁には、銅製のアンティークアイアン室内窓が取り付けられていて、シェフは時々客席の様子を伺いながら、的確なサービスを提供することができます。
アメリカンヴィンテージ好きだった浅見さんですが、佐弥さんの好きな優しい雰囲気やDEN PLUS EGGのつくる世界観に影響され、いまではすっかりヨーロピアンヴィンテージ志向へと変化。「アーチや木のドアやアンティークの椅子の柔らかい雰囲気がとてもいいですね。昔からレザーや洋服など、経年変化で味わいの出るものが好きだったんですが、お店も、使い込んでどんどん良くなる、スタッフやお客さんと一緒に成長していけるようになればいいと思っています」と話す。
「オープン直後にコロナ禍となりテイクアウトを始めました。最初はアラカルト中心のビストロとしてスタートしましたが、ようやく普通営業が始められるようになるとアラカルトだと満足のいく料理を提供することが難しいとわかり、いまはおまかせコースのみにしています。おまかせコースだと、料理の素材や組み合わせ、流れやアクセントなどをトータルに考えて全力投球できるので、結果として同じものをアラカルトで注文していただくよりクォリティの高いものを出すことができるんです」という浅見さん。「店舗デザインもきっと同じですよね。相手を信頼しておまかせする方が、きっといいものができあがるんだと思います」とにっこり。
すっかりDEN PLUS EGGを気に入った浅見夫妻は、現在自宅となる注文住宅もDEN PLUS EGGに依頼しているという。店舗同様おまかせで注文をして、想像の上をいく家ができるのも遠くなさそうです。
Aigrette(エグレット)
姫路市本町68-100