RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
京都の町家をシンプルモダンにフルリノベーション
京都市中京区 2024 /Aug/ 31 updated京都の中心地の町家が立ち並ぶ京都らしいエリアで、古物商の倉庫として活用されていた古い建物を改装した、モダンで快適なセカンドハウスが誕生しました。「頭の中でまとまりきっていなかった願望を見つけ出して、想像以上のアイデアをプラスしてつくっていただいたような感覚です」と話すのは、京都出身で現在は東京で事業をしているUさん。「どうしてもつくりたかったシンクのついたダイニングテーブルを、アンティークテーブルを使って、自分が描いていたイメージよりずっと素晴らしいかたちで実現していただきました」と教えてくれました。
2年ほど前、お気に入りの京都御所南のエリアで物件を見つけたUさんは、早速4社から見積もりを取ったもののしっくりくるプランがなく、どうしようかと考えながら歩いているとき、偶然一軒のショップ『D+E MARKET京都店』の前を通りかかりました。町家の佇まいに惹かれて中を覗くと、そこにはアンティーク雑貨やヴィンテージ家具、ファブリックが並んでいました。空間も商品もとても気に入ってお店のスタッフと話すうち、ショップの母体は設計施工を手がけるDEN PLUS EGGで、東京にもオフィスがあることを知り、一度相談することを決めました。
相談を受けたのはDEN PLUS EGGデザイン担当Kさんと現場担当Yさん、施主であるUさんの一番の希望は “大きいテーブルにシンクをはめ込み、シンクとダイニングテーブルを兼ねた機能的な造作キッチンをつくる”こと。その希望を受けて、ふたりはDEN PLUS EGGらしさをプラスした“アンティークのテーブルにシンクをつけること”を提案しました。D+E MARKET(DEN PLUS EGG販売部門)でセレクトした側面の彫刻が美しく風合いのいいテーブルを見つけたので、早速Uさんに連絡をとりました。状態もデザインも素晴らしいアンティークテーブルでUさんも気に入ったのですが、サイズが少し小さくダイニングテーブルとして使えるかどうかが問題になりました。Uさんは「側面に板を付けてバタフライテーブルみたいに伸ばせるようにしたらいいのでは?」と依頼しました。するとYさんが「そんなことをしたらせっかくの美しいテーブル側面の持ち味が損なわれてしまうのでほかの方法を考えましょう!」と猛反対しました。このとき、「テーブル一つにこれほどまでのこだわりを持って空間づくりを考えてくれる人たちと一緒に家をつくりたい」と、心から思ったと言います。そして正式にリノベーションを依頼することが決定、そのシンク付きテーブルは、側面の美しいデザインはそのまま前面に独自のエクステンションをつくることで解決したのです。
京都らしい細長い造りの家を3分割した真ん中に位置する、1・2階併せて約50平米の物件は、窓を開けても隣家が迫っているため景色は求められません。そんな場所を快適にするために、2階部分は壁を取ってワンフロアのLDKにして、漆喰を思わせる白い塗装を全面に施すことで、窓からの自然光が空間全体に明るく広がり、壁には防音処置をして天井から吊り下げスピーカーを造り付けにしました。
1階はゲストも泊まれるように2部屋の個室をつくり、トイレとお風呂の間の元々外であった場所に屋根をつけて一続きの快適なトイレ&シャワースペースを設置、さらにとてもステキな洗面台を独立して設置しました。玄関脇のデッドスペースは坪庭風の採光を兼ねたオープンエアスペースに、真鍮の蛇口を設置して緑の手入れや外のものも洗えるスペースとなりました。
建て替えのできないエリアであるため、元の躯体や隣家との共有壁を活かしながら、壁や水回りなどを再構築し直す必要のある物件でしたが、完成してみると元の建物の面影は2階の梁のみ。そのほかは真新しい家のような快適でシンプルモダンな空間となりました。