RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
和室のある元の建築を生かした上質なリノベーション。
兵庫県神戸市 2022 /Mar/ 18 updated住吉駅からほど近い住宅街に築49年のとてもステキなマンションがあります。緑や青色の瓦屋根の4棟は、オレンジやブルーの庇がアクセントのかわいい外観。震災でもまったくダメージを受けていない、立地が良く構造のしっかりした建物です。マンション北側にはとても大きな松の木があってどこか神聖な雰囲気がします。
ここの一室の持ち主であるUさん夫妻は、知人のひとり暮らしの部屋を探しに同行したとき、偶然このマンションを見つけました。調べてみるとたまたま一部屋だけが売りに出されていたのでお部屋を見に行き、気に入ってすぐに購入を決めたのでした。
以前から建築作品として価値のある古い建物に興味があり、自分たちで住まなくても持っておくことで、古き良き建物を保全したり、そこに住んでくれる人と建物への想いを共有したりできることを緩やかに目指してきました。
2部屋の和室、1部屋の洋室が独立していて、南向きの大きいLDKがある73㎡のお部屋は、これまであまり大きなリフォームはされず建築当初の間取りや風合いを残すものでした。「ここに以前住んでいたおばあさんは、この部屋をとても大事にしていて、きれいに住まわれていました。だからリノベーションもできる限り原型を生かしたものにしてほしいと依頼しました」とUさん。
初めてのリノベーション、DEN PLUS EGG本社を見たときに感じたこと。
新築マンションに住むUさんにとって、リノベーションを依頼するのは初めてのこと。この物件と出会って初めてリノベーション会社を探し始めました。阪神間にあるリノベーション会社の事例集をあれこれ見て、見定めた2軒の会社に連絡を取り、相談に出かけました。
「DEN PLUS EGGともう一軒訪ねたのですが、何もかもが全然違いました」と笑うUさん。「国道沿いのリフォーム会社では、既製品のカタログを見てそれを選ぶだけというようなことを説明されただけでした。そのあと南昭和町のSTUDIO DEN PLUS EGGへ行き、中に入るとまずその建築に驚きました」。
和菓子舗の4代目であるUさんは、古き良きものに囲まれて育ってきました。それだけに古いものをていねいに扱うことにはとりわけ敏感で、DEN PLUS EGG本社が古い洋裁学校の床の間や教室などをそのまま生かしたリノベーションをしている様子に惹かれました。
「建物と内装の雰囲気に魅了され、自然と心が動かされたのかもしれません」と自身の気持ちの動きを再確認するUさん。打合せでは細やかなヒアリングが始まり、すぐに現地の調査に行くことになりました。「暑い日で、現地に駆けつけてくれた設計担当さんが汗だくだったのを思い出しますよ」と、インタビュー中もスタッフともすっかり打ち解けた様子。
現地確認後すぐに出されたプランを見て、手探りで始めたリノベーションという初めての体験がすべてうまく行くことを確信したと言います。リクエストは店のシンボルになっているタイルのイエローを使ってほしいということ。そこでプランはI型オリジナルキッチンのキャビネットを軽やかなマスタードイエローに。LDK入り口の室内ドアは、元の造作の良さを生かして、マスタードイエローと相性を考えてモスグリーンに塗り替えました。
自分の周りの人みんなにいい思いをしてほしいという願い。
京都で学生時代を過ごしたUさんは京都の町家がとても好きで、明治時代の登記が残るの町家を買い上げ、修復して宿として貸しているというもう一つのストーリーもお持ちです。家業も和菓子、日本建築の持っている良さについて深い理解があります。
このお部屋も元々6畳間の和室が2つ。一つの襖や壁をネイビーに塗り替え、もう1室は白い壁でお化粧直し。一方4畳半ほどの洋室は無垢フローリングにして、シンプルな仕様にしました。洋室の窓を開けると、目の前には大きな松。緑が心地いいお部屋です。
ご自身が住む部屋ではないけれど、フローリングはすべて無垢材を使用した上質な仕様に。玄関ホールから廊下にかけてはオーク無垢材のパーケット貼り。細部まで上質なものを使用し、水回りは快適に、デザインは美しく住みやすく、自宅のようにていねいに考えてリノベーションをされています。その気持ちをUさんに尋ねると「ここに住まれる方には、このお部屋が持っている元々の良さと上質な仕様の中で気持ちよく暮らしてほしいという思いがあります」とのお答え。「仕事を通して最近よく思うことは、自分と関わりのある方すべてにいい人生を送ってほしいということなんです。この家に住まれる方にも、いい家だなと思ってもらえるとうれしいです」とUさん。