RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
デザイナーズ家具を引き立たせるリノベーション。
大阪府郊外 2021 /Dec/ 17 updated子どもたちの「実家」をつくりたい。
「苦楽園の実家を訪れたある日、すぐ近所に『D+E REVIVAL』ができていたんです。とてもステキな外観で、アンティーク雑貨やヴィンテージ家具が見えたので、すぐに扉を開けました。そのとき見つけたのが一つのボックス。迷わず買って帰りました」と、思い出話をするように最初の出会いを語ってくれたのはHさん。「その後、『D+E REVIVAL』のホームページを見てリノベーションをしていることを知り、いつかきっとリノベーションをお願いしようと心に決めました」。2017年の出来事です。
その後家業を引き継ぐことになったHさんは、京都から大阪の賃貸マンションへ引っ越すことになり、会社から車で通える場所で物件探し始めました。駅に近い街中のマンションや郊外の一軒家などさまざまな物件を見るうちにじわじわと湧き上がってきた思いは、2人の子どもがいつでも帰ってこられる「実家」をつくりたいという思いでした。そうして郊外の住宅街に建つ、庭が広く造りのしっかりとした和風木造建築の中古住宅と出会い、そこを子どもたちの実家として、ゆっくりと育てていこうと決めました。
デザイナーズ家具コレクションを引き立たせるリノベーション。
大学生のとき、デザイナーズ家具に目覚めたHさんは、まずイームズのシェルチェアを買い求めました。その後、ハンスJウェグナー、ボーエ・モーエンセン、ピエール・ガーリッシュなど、新旧・国を問わず気持ちが動いた家具を集めるのがひとつの趣味となっていきました。そんなHさんがリノベーションに求めたのは、それらの家具が引き立つ空間です。こうしてチーク系の家具を引き立てるオークの無垢フローリングと白い壁&天井をベースとした広々とした空間プランができました。
「改装前のこの家に入って最初にいいなぁと思ったのはキッチンとリビングをつなぐ木のアーチです。年月を経ていい飴色になっていました、そのアーチを残しながら、できる限り不要な壁を取り払ったリノベーションをお願いしました」とHさん。もうひとつリクエストしたのはパリのアンティーク・ディーラーのインスタでいつも見かける“ピンクベージュ”の壁。「なんていい色だろう。ピンクベージュの壁にヴィンテージの家具を置きたいと思いました」。
キッチンはシンプルな白のタイルとステンレス、オーク木材のシンプルなデザイン、元々あった造りの良い木製カウンターとアイランドはそのまま利用。ダイニングスペースの壁はピンクベージュで塗装され、アーコールの丸テーブル、イルマリ・タピオヴァーラやマルセル・ブロイヤーの椅子がいいコントラストを生み出しています。
設計担当者からは、もう一色ネイビーグレーの壁面の提案を受け、キッチンカウンターの一面とリビングの一面はネイビーグレーの塗装が施されました。
「家具を引き立てるために、白い壁で空間自体はシンプルにとお願いしていたのですが、ご提案いただいたネイビーグレーの壁がチーク材のサイドボードととても相性が良く驚いています。とても気に入りこの空間をもっと際立たせたいと思って、家が完成した後で、大きな古いアイアンの窓枠にミラーを貼ったものを特注してアクセントとして置きました」とHさん。デザイナーズ家具は、気に入ったものがあれば買い足し、不要なものは販売して循環させながら少しずつ入れ替えていると話してくれました。
家も庭も家具も時間をかけてゆっくり考えて育てていきたい。
玄関の引き戸はとても気に入っていて、そのまま残し、老舗旅館のような和風の下駄箱もそのまま、上にはラジオハウスペンダント、玄関ホールには祖母から譲り受けた大きな油絵が飾ってあり、正面にはジャン・プルーヴェの折りたたみチェアが設えられています。
「この家に住んで、ヨーロッパの古い家具と和のものは意外と合うのだと知りました。特に北欧の家具とアンティークの和食器はとても相性がいいですね」と微笑む。
玄関左手には、2室の和室をつなげて一部屋にしたカーペット貼りの趣味の部屋があります。ここにはオーディオセットとプロジェクターが置かれて、Hさんが大好きなデザイナーズ家具をディスプレイする部屋にしようと考えていたのですが、ピアノを習い始めた子どもたちのために、グランドピアノを迎え入れることになりました。
西向きの壁面はもともとあった2部屋の和室の低い窓をそのままにして広い空間にしました。縁側はフローリングにして、南からの日差しを優しくさせる空間に。「低い窓からの光や縁側からの光がとても美しいんです。ここに住み始めて花鳥風月の魅力を知るようになりました」と微笑むHさん。
「住み始めて2年になりますが、まだ手をつけられていないのが庭です。最初にこの物件を見たときは緑が鬱蒼としてまるでジブリの世界のようで気に入っていたのですが、なぜかきれいに刈り込まれてお譲りいただいたので、ちょっと残念だなと(笑) でも庭も家も家具も、子どもたちと同じくじっくりと大切に育てていこうと思っていますので、時間をかけてゆっくりと楽しみながら考えていきたいと思っています」と話してくれました。