RENOVATION / NEW HOUSE / STORE DESIGN
できる限り新しいものを使わない注文住宅。
兵庫県西宮市 2024 /Jan/ 19 updatedいま考えられる理想の家をつくろうと建てられたT邸。ここにはいくつものDEN PLUS EGGが持てる空間デザインとそれを支える構造、そして家づくりの思想が詰まっています。
住宅街の一戸建てでありながら開放的な眺めとたっぷりとした採光を得るために、構造に使用したのが「テクノハイブリッド工法」。これは鉄骨と木造軸組工法を組み合わせた工法で、デザイン性と耐震性に優れた構造です。この工法によってリビング南面に幅2.5mの大きな掃き出し窓をつくり、約30畳のLDKには、ヨーロッパ絵画のような一方向からの美しい自然光が差し込みます。
その大きな窓の向こうはイングリッシュガーデン。柵はブラウンにペイントされた木材製、小さな野草のなかにテーブルが置かれたその庭は、見て楽しむ要素がいっぱい。カーテンを開け放つと、窓の景色は四季折々の大きい風景画を見ているような気持ちになります。
そしていまDEN PLUS EGGが一番大切にしたいこと「できる限り新しい素材を使用しない」ことにトライした内装です。イギリスの古材を削って再生させた木材をいろいろな場所に使用。キッチンキャビネット、階段や手すり、そしてフローリング、この木材は表面の磨き方によってさまざまな表情を出します。あまり磨かずヴィンテージの風合いを残すと新しい造作家具にヴィンテージのニュアンスを纏わせることができ、きっちり磨いて新しい木材のようにして使うと、もともと木が持っている強固な性質を生かした無垢の木材となります。
室内ドアはすべてヴィンテージ。風合いはそのままノブや鍵など傷んだパーツを取り替えて使用しています。玄関口に並ぶ、かつて同じ家にあったと思われるデザインの2枚のヴィンテージドアは、この家で再び並んで設置され、どこか幸せそうに見えます。
大勢で集うダイニングルーム
広々としたLDKの1角には壁向きにL字キッチンが設えられ、調理台となる大きなアンティークテーブルが置かれています。水回りと火口を離してその間を調理スペースとして取り、補助調理と配膳スペースとなるアイランドをアンティークにすることで、デザインと機能が両立します。数々のオリジナルキッチン製作から学んだキッチンデザインのノウハウを余すことなく生かしたキッチンです。
特筆は大理石のキッチン。大理石は熱に強く耐久性が高い素材、熱々のものを直接置いても問題なく、麺打ち、お菓子やパンなど粉物の製作時にはまな板を使用せず、ダイレクトに調理ができます。表面が滑らかなのでお手入れもとても簡単。そしてこれほどの機能を持ちながらデザイン性も高く、キッチンにあしらうだけでLDK全体の雰囲気を格調高くする存在です。磨き込んだヴィンテージ木材のキャビネット、ピンクベージュの壁と調和して、LDKの一角を絵画的に見せています。
ダイニングスペースには古材を使ったオリジナルの大きなテーブル。来客を交えて食事をする機会が多い家だから、キッチンは複数人で使えるゆとりのスペースを取り、ダイニングテーブルは10人以上が集っても狭くならない大きさにしました。
ダイニングテーブルのサイドには、南フランスの邸宅で使われていた背の高い食器棚、リビングスペースには1950年代のフランスのヴィンテージソファ、ほかにも家具はすべてアンティークやヴィンテージで統一され、新築住宅であることを忘れるような世界観をつくりだしています。
各部屋に込められた思い
ユニークなのはフローリング、部屋ごとに貼り方を変えて、イメージの違いを楽しんでいます。1階はヴェルサイユ宮殿の床にちなんだ「ヴェルサイユ貼り」、2階の寝室はフレンチ・ヘリンボーン、パーケット貼り、朝鮮貼りなど部屋ごとに貼り方を変え、雰囲気の違いを出しています。再生古材を使用した階段も含めて、フローリングの仕上げはオイルフィニッシュ。時がたつと味が出て、ヴィンテージドアやアンティーク家具に馴染んで、どんどんいい空間に成長してくれるからです。
優しいピンクベージュの壁とボタニカルな壁紙が印象的な主寝室に面するのが洗濯物を干せるサンルーム。ヴィンテージドアの向こうに溢れる光、洗濯をしない日はティールームとして使えるほど居心地のいい空間。日々の暮らしの大きな時間を占める家事をする空間が心地いいと、家事の時間は楽しい時間に変わっていきます。
2階の洗面所には、イギリスの博物館で使われていたキャビネットを洗面台として使用し、サウナとシャワールームを設えました。ハーブミストのサウナでからだを癒した後に心地いい空間でお手入れをする。セルフメンテナンスの時間を、楽しく充実した時間にしてくれます。
3階はペントハウスとルーフバルコニー。バルコニーにはぐるりと壁をつけて近隣からの視線を遮り、壁の向こうには甲山と六甲山、そして美しい夕日を眺められる素晴らしいプライベート空間。友人たちと夕日を楽しむホームパーティができるように、ペントハウスにはアルチザンタイルと大理石でつくられた小さなキッチンが設置されています。
このペントハウスは趣味の部屋&書斎を兼ねていて、スクリーンを置いて友人たちと一緒に映画を楽しんだり、一人机に座ってアイデアを練ったりする重要な空間。広すぎない空間と好きなものだけを厳選したインテリア、窓から見える緑の山は、忙しい日々にひとときの余白時間をつくってくれます。
大勢で過ごす大空間のLDK、日々の暮らしが美しくなる生活空間、自分だけの時間を楽しむ趣味の空間、それらをつなぐヴィンテージの家具やパーツ。時間が経ってどんな風に馴染んでいくのか、これからが楽しみな一軒家です。